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サイアム潜水隊始末「サメサンミニ漂流記」
2004年8月1日
サメサンはパタヤからさらに車で約30分ほど南下した漁港の街である。
朝九時にバンコクやシラチャから三々五々その港に集まった我がサイアム潜水隊。

ウツボ隊長は朝早く目が覚める年齢に達したのか皆が来る一時間以上前から桟橋で魚釣りに興じている。
全員が揃いほぼ定刻に港を出航しダイビングポイントに向かう。

サイアム潜水隊16名、タイ人約10名の合計26名がその日の乗合い船のダイバーだった。
そのうちサイアム潜水隊は
インストラクターがレスキュー等教習中の6名を、ダイブマスターが4名をガイドし、残りのわれわれ壮年(老年?)4人組は勝手にやれということでフリーダイビングとなった。

1stダイブは海中の伊能忠敬を自負(夢想)するウツボ隊長と歩く魚図鑑ことハコフグ隊員、ここ一年のダイビング本数潜水隊随一のアオリイカ隊員、そして隊員というにはおこがましいほどの参加率のハナダイ隊員の壮年4人組が、初の海中測量に望んだ。


目的はほぼ達成され満足顔のウツボ隊長だった。

「この写真は海底の伊能忠敬を目指すサイアム潜水隊長。測量ロープを片手に海中から天測を試みる???。」

 そして昼食休憩後、2ndダイブとなった。岬の近くに船が錨をおろす。珊瑚の根を見ながら岬をまわりその先で船に収容してもらうというドリフトダイブだ。

岬の向こうは白波がたっている。

「この波では収容の際危険だ。」
「海流の方向がドリフトの方向に逆で危い」

などの意見がでたが、海峡判断はこのへんの海を知り尽くしているタイ人船長が決める。

決行に決定しダイバーは次々と海中ににエントリーする。
海中は視界3ー5mもない透明度、しかもその地点は4m以下の浅い水深。
我々壮年ダイバーは波の影響をまともに受けて岩の根にぶつかりそうになる。

7分行ったところで仲間2人を見失った。2分後浮上50m先に仲間を見つける。浮上してみて分かったが波が又一段と高くなっている。

集まって再度潜水、流れの早さと視界の悪さのため大の大人が手をつないで進む。途中でタイ人の女性ダイバーがやはり手を組み合い4人が一つの固まりとなって進んでいくのに出くわした。

それをやり過ごし岬を回ったとたん横からの海流で皆はじきとばされ岩にあたりそうになり、てんでバラバラとなってしまった。回りには誰も見えない。仕方なく再浮上することにした。

浮上して海面を見回すとみんなはすでに浮上していた。
ここで全員一致の結論は『船に戻ろう』 300m先に見えた船まで深度12mの浅場を潜水して向かっていった。

28分かかって予定地点で浮上してみると船がいない。

船はさらに移動していたのだ。慌てて目印のオレンジ色のフロートを立てる。波は高く3m位はある。波の谷では無論周りは見えなくなる。

そこで気が付いたのだが、200m位の間隔で2本もオレンジ色のフロートがたっている。船に収容されるのを待っているグループが他にもいたのだ。人は時々頭が見えるが何人か分からない。

20分ほどして舳先ををこちらに向けた船が見えた。我々を発見したのだとホットして待っていると近くにいた別のグループを先に収容し始めた。

座して(漂流して)待つだけの余裕はない。我が壮年隊は船に向かって必死に泳ぎ始めた。

50mまで近づいたが海流に阻まれどうしてもそれ以上近づけない。やむを得ず漂流状態で再び待つことにした。収容が終わればすぐにこちらに来る筈だ。

ところが待っている間に我々と船との距離は海流により再び段々開いていく。いくら待っても船は動かない。
ついに船との距離は500m以上あいてしまった。
近くを西洋人が乗った船が通った。

手を振って助けを求めたがさして深刻な状況ではないと見られたのだろう、軽く無視された。いよいよ我々は漂流状態になったと皆が思った。

やきもきしながら不安につつまれながら考える。

今3時過ぎこのまま夜になったらとても体力が持つわけはない。波があるので体勢を保つのに体力を使うのだ。

途中で左足のふくらはぎがつってしまった。
やっと船が動き出したが舳先はこちらを向いていない。しかもきわめてのろい。まだ誰かを収容しているのだろうか。

舳先をやっとこちらに向けた船が近づきロープを我々に投げたのはそれからさらに待ってからだった。

後からダイバーズウオッチで確認すると思ったより短く約50分の漂流だった。 
そして船上に収容されて驚愕したのはまだダイバーはまだ半数しか収容されていなかったのだ。

 船の上からみるとオレンジ色のフロートが波の合間にあちこちから見える。

さらに捜索が続き最後のダイバーが救助されたのはそれからさらに1時間後、若いタイ人の女性4人組。我々と水中ですれ違ったあの4人組だった。 
顔は青く本当に疲れ切った体で船に引き上げられた彼女らは鼻水を出して鼻だけが赤かった。

ドリフトダイブが本当のドリフト(漂流)になったと 笑えたのは船が港に向かい元気を取り戻した頃だった。