アジア最大の滝 黄果樹大瀑布
1999年 3月 中国 貴州省 安順
暗闇の中 手探りで部屋から廊下に出た。廊下には灯りがあり、夜勤の見張番である15〜16歳くらいの少女が座ったまま机にうつぶせになり肩から毛布をかけて熟睡している。
朝の5時であった。トントンと机を叩くと少女はゆっくりと頭を上げ眠たげな眼を開いた。部屋の電気がつかない事を廊下の天井の電灯を指さして説明するがもとより簡単には通じない。

再び部屋の前に戻りドアを開けて手招きし電灯を指さす。彼女は少し怯えた様子でおずおずと近寄り、しかし私から少し離れて中を窺っていたが、真っ暗な室内を見たとたんに合点がいった顔をして頷いた。

目が覚めたように「没問題(メイウエンテイ;問題ない)」といって踵をかえし廊下の端へ消えた。配電盤のブレーカーを復帰させたのかそれから2〜3分後にようやく待望の灯りが部屋に灯った。

大急ぎで荷物をスーツケースに詰め込み部屋を後にしレセプションでチェックアウトの手続きをする。

タクシーを呼んで貰うため昨日通訳に用意して貰ったメモを見せる。タクシーは電話で呼ぶと5分で来るはずであったが10分たっても来ない。

筆談でホテルマンに尋ねるが”すぐ来る”というだけで全く要領を得ない。この燕安酒店は安順で唯一の3☆ホテルであり英語の分かるスタッフが一人いるとの事だったが一週間の滞在中一度もお目にかかれなかった。

20分たってもタクシーは来ない、いらいらが頂点に達した25分経過後駅からホテルに客を送って来たタクシーがあった。

これ幸いそのタクシーに飛び乗り待ち合わせ時刻の丁度6時に西秀館賓館に着いた。このホテルに止まっているN社のY総経理と通訳に合流しアジア最大の滝”黄果樹大瀑布”を観光した後引き返し、その足でこの地安順から州都貴陽の空港までバスで行き、そこから空路広州まで飛ぶのが今日の日程だ。

従って時間に遅れると、予定が狂うだけではなく、一人ぼっちになり言葉が通じないこの地で途方にくれる事になる懸念があった。

  黄果樹まで一面の黄色い絨毯と見まがうばかりの菜の花畑やその中に点在する小山に眼を奪われながら車でおよそ1時間。
アジア最大の滝は轟音を轟かせているかと思いきや、岩肌をさらしていて水が殆ど流れていない。期待と裏腹の結果に落胆しながら滝壺まで降りていく。

そこは記念撮影の場所である。といつしか滝の水は少し増えている。渇水時期なので上流の水門で調節しているとの事で、増水期は水しぶきでびしょ濡れになると通訳。

一旦降りた滝壺から滝の真横まで上った。滝の裏側が観光コースであったが省略しケーブルカーの駅まで一気に歩いた。

ケーブルカーに乗り上の道路まで出て、待ち合わせていたタクシーに乗り込んだ。バスに乗り遅れないためにすぐさま安順に引き返した、。

通訳曰く「観光に行ったのに日本人はどうしてそんなに急ぐんですか。観光の意味がないではありませんか。」
  
予定の一つ前のバスに乗る事が出来、貴州省貴陽に向かう。
最近出来たという高速道路を通って約1時間のバスツアーの筈であった。

バスは満員で我々は最後尾の座席に落ち着いた。一応禁煙と書いてあるがバスが発車する前にもうあちこちから紫煙が立ち上る。ピーナツや向日葵の種など食べてる者が多く、床は時間とともに散らかし放題。おまけに唾を床に吐く者もやたら多い。眼を瞑って時間が立つのを待つのみ。

ざわめきの中をうとうとしていたがバスが止まった気配で眼をさました。外を見ると大渋滞、Y総経理が事故だと教えてくれた。

バスは徐行、停止を繰り返すノロノロ運転となる。この分だととても予約飛行機には間に合わない。突然バスが脇道に入った。なるほど渋滞時の対応ノウハウがあるのかと喜んでいたらすぐに渋滞でストップ、全く動かない事約10分、バスは狭い路を何度も切り返して再びUターンし本道に戻った。

何の事はない判断ミスにより余計遅れただけだ。それでも徐行しながらバスは進み事故現場まで来た。トラックが荷くづれで横転し道の3分の2程塞いでいる。そこを通り越すとバスは軽快に走り出し、我々は予定の一つ前のバスに乗っていたのが幸いし、どうにか飛行機に間に合った。

中国に戻る