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始めての贈賄
1997年5月 マレーシア
1997年5月3日、最初のマレーシアであった。 
関空からペナン空港への直行便が高度をさげ亀の形をしたペナン島がはっきり見えて来た。

しかし海は赤茶けた河の流れに染まり透明感がない。 
着陸後入国審査所を出て荷物をターンテーブルから取り出し税関の前に来た私は、先頭の乗客だった。

スーツケース以外に段ボールを2箱持っていた。業務用資材である。  
段ボール箱を指さした2人の吏員に早速質問を受ける。 
 
税関吏員:「中身は何だ?」   
私:「○○○○○だ」。 

税関吏員:「ふーんいくらだ?」 
私:「2万円です」 

税関吏員:「中身は何だ?」   
私:「○○○○○だ。インボイス(内容証明書類)はここにある」。

税関吏員:「ふーんいくらだ?」 
私:「2万円だ」  

一人職員が増えた。 


税関吏員:「彼は俺の上司だ。中身は何だ?」
私: 「インボイスをはっきり見ろ。何故分からないんだ」 

税関吏員:「いくらだ?」   
私:「2万円だ。税金を払う 領収書をくれ」 

又一人職員が増えた。 

税関吏員:「彼はぺナンの税関の責任者だ。 早く答えを出せ」  
私: 「-------?」

だんだん分かりかけてはいたが、他の乗客がたくさんいたので控えていたのだ。
しかし一抹の不安はあった。贈賄で逮捕されたら。
いつのまにか最初2人だった職員は今や4人。

取り囲まれる中おそるおそるハンデータイプのゲーム機を4個差し出して言った。

「日本のお土産だ」  
「おお!!おみやげね」 
日本語でそう言ってそれを受け取ると、彼らは実にあっさりと引き揚げた


そして誰もいなくなった。
最初に降機した私は税関を通る最後の乗客となった。何故か税金は不要だった。 

税関の外では現地スタッフが私を出迎えホットしていた。